Heaven


聡とは今も仲が良い。
周りから『付き合っている』と噂されたこともあるが、あたしは気にも止めていなかった。

別に言わせておけばいい。
もしかしたら陸の耳にも入っているかもしれない。
でもどうでも良かった。陸はあたしの知らない恋をしているのだから…
あたしにも秘密くらいあってもいいと思ったからだ。


目を輝かす聡ににっこりと微笑み、鏡をカバンの中にしまう。


『そうじゃん!美羽、聡と行けよ!』


春か聡の背中を叩き、
聡をあたしに近付ける。
嫌では、ない。
聡のことは友達として好きだし、いい人だと知っているから。


『…そうだね、聡、一緒に行こっか!』


やましい気持ちなんてない。
…ゼロだ。
だからあたしは明日の夏祭り、聡と行くことに決めた。

隣では飛び跳ねて喜ぶ聡。
頬を赤く染まらせて、
白い歯を見せる。


聡も陸と同様、背が伸びてかっこよくなった。
聡の人気は日に日に上昇していく。

だから別に嫌ではなかった…。



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