Heaven
何度呼ばれたかは正確には分からない。
肩を誰かに叩かれたので、後ろを振り返ると、そこには、不思議そうに見つめる陸がいた。
どきん、と弾む心臓。
こんな近くで陸を見るのは久しぶりだ。
いつもテニスコートからだったから…
気が狂いそう。
今日はいつもより暑い。そんな感じがした。
『り、陸!?どうしたの!?』
『それは俺の台詞だって!美羽が蝉なんか見つめて立ってるからだろ?』
変わらない笑顔で、あたしを見て笑ってくれる。そして頭を撫でて、幸せそうにまた笑う陸。
その幸せは誰がくれたの?
聞きたくても聞けない、臆病なあたし。
少しだけ蝉が羨ましく思う。
蝉のように、自分の存在を自己主張出来たらいいのに…。
『ただ考え事してただけ!!』
いつものように接して、あたしは歩き出す。
するといきなり陸は、あたしの腕を掴み、動きを止めた。
伝わる、陸の温度…
やめて、離して。
あなたにもっと触れて欲しいと思ってしまう。