Heaven
あたしは浴衣に駆け寄り、その浴衣を肌で感じた。
次第に『早く着たい』と込み上げてくる。
笑顔が零れていく。
『早く着たいなぁ!』
ねぇ、もし…
今日行く相手が陸だったら…あたしはもっと嬉しかったのかな…?
もし…
この浴衣を着たあたしを見た陸は、なんて思ってくれる?
…心を弾ませ続け、
時計の針はようやく3時を回った。
この時間をどれだけ待っただろうか?
何度も時計を見て、
何度も浴衣を見て、
何度も浴衣を触った。
着たくて、着たくて、
着る前から気が狂いそうだった。
そして母親があたしに浴衣を着せていく。
着付けを習っていた母親は、手際よくあたしを完成させていく。
『帯、キツくない?』
『うん!大丈夫!』
姿見に映ったあたしは、いつもと違う自分に見えた。
髪の毛も母親に可愛くアップにしてもらい、慣れない化粧もした。
あたしの体に咲いた向日葵。
早く、誰かに見せたかったの。
心は更に弾みをつける。