Heaven


鮮やかな茜色は、
次第に消えていく。
夏は夜が来るのが遅いせいか、5時を過ぎても辺りは明るい。


『美羽…可愛いね。浴衣…』


夏祭りが開催される場所に向かっている途中、小さな声で聡に言われた。その言葉を聞いたあたしは急に恥ずかしくなり、巾着袋をぎゅっと握りしめて、足元を見る。

ちらっと聡を見ると、
いつもは制服なのか、私服の聡が大人っぽく見える。


…聡も十分かっこいい。狙っている人はいるに違いない。


『…ありがと』


聡の顔が見えなくて、
足元に視線を落としたまま、こう言う。

二人の影が並ぶ。
その姿はどこかぎこちなくて。
更に緊張さが増す。


開催場所に近づくにつれ、たくさんの人で溢れている。
こんなにもたくさんいると、人口密度が増し、それと同時に熱気も増す。

人混みが嫌いなあたしにとって、ここは試練が多すぎる場所であろう。


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