Heaven


『美羽、大丈夫?』


『…う、うん…平気』


口ではこう言うが、本当は平気ではない。
なぜならばさっきから人にぶつかっては、前に進めないからだ。
この夏祭りは毎年沢山の人が来る。
でも今年は例年より増したに違いない。

歩くスペースなどないに等しい。
それに露店を見てる暇もない。


きつく結ばれた帯が苦しくて、まともに息すら出来ない…


『…ちょっと…待って…聡…』


『大丈夫かよ?人がいないとこに行こっか?』



聡はあたしの手を握り、引っ張っていく。

初めて手を握られた。
それにドキッとしてしまう。

聡の温かく、大きな手。でも陸の手と比べてしまうあたしがいた。


陸の手はどんな手かな?って。
聡より温かいかな…って。


唇を噛み締めて、
あたしはゆっくりと息をする。


するといきなり聡は止まり、その反動であたしは聡にぶつかってしまった。




神様、あなたは意地悪がお好きなのですね…



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