Heaven
『…どうしたの?』
『いや…なんにも…ただ…』
聡の顔を覗くと、聡は曇った表情を見せて、ゆっくりとどこかを指差した。
あたしは不思議に思い、指差した方向に顔を向ける。
そこには…人混みの中にいる…
愛しいあなたがいた…。
それだけだったら、
あたしは飛んで喜ぶだろう。
いつものように頬を赤く染まらせて、はにかむ笑顔を零すだろう。
だけど…違った。
今、あたしの表情は、この浴衣の向日葵のように輝いていないに違いない。
そして…ゆっくりと涙が一粒流れた─…
あたしどれだけ泣けばいいのよ─…
目に映る光景は…
楽しそうに露店を回る、陸と京子の姿。
京子はあたしと同じ格好をしている。
そう、浴衣姿だ。
京子の浴衣は紺色に、ピンクの花が散らばっている。
あたしとは真逆で、
可愛くて大人っぽい。
あたしの浴衣が幼稚に見えた。
お母さん…ごめんね…