Heaven


負けてる…
あたしは遥かに京子に負けてる…

そう京子を見て思った。かっこよくなった陸の隣には、京子がとても似合っている。


あたしなんか…


『…ごめん…聡…あたし…』


二人の光景を見たくなくても、視界にはちゃんと映っていて…
陸を目で追ってしまう。
陸だけ…
陸だけを…



『…美羽…俺がいるから!あっち行こ?』


聡は力強くあたしの手を握り、ゆっくり落ち着ける場所を探してくれる。聡の背中が、普段より大きく見える。

男の子なのだと改めて気づかされる…


そしてあたしと聡は、
人通りの少ない狭い道路を見つけ、そこに腰を下ろした。


やっと普通に息が出来る。


『ごめんね、聡…』



『いいよ。大丈夫!俺も人混み嫌いだし!あ、ちょっと待ってて!!』


聡は『待ってて』と言い残し、あたしを一人置いて、再び人混みの中へと消えていった。



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