Heaven


一人残されたあたしは、近くに転がっていた石ころを下駄で蹴る。
コロコロと転がる石ころは、排水溝の中へと落ちていった。


まるであたしみたいだ。
さっきまで明るかった世界も、一つの穴に落ちれば暗い世界に変わる。

今のあたしみたい。
暗くて…逃げ出せない気がする。

ここはどんな世界?

あたしが思うには、
ここは嫉妬で溢れた世界だろう…きっと…。


『はぁ…なんでうまくいかないのかなぁ…』


答えなんか分かるはずもないのに呟いてしまう。
誰か教えてくれないかな?



『美羽!はい!!』


突然目の前に差し出されたものは、光沢のあるリンゴ飴だ。
あたしは上を見上げる。そこには満面な笑みを浮かべた、聡がいた。


『え…?あ、ありがと…』


あたしは差し出されたリンゴ飴を受け取る。
赤く艶やかなリンゴ飴は、見た目から美味しさを感じとれる。


聡は優しすぎるね…



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