Heaven
その優しさに甘えていたのかな?
『美羽は…まだ陸のこと忘れられない?』
隣に座って聡はこう聞く。
本当は知っているでしょう?
あんな光景を見て、泣いてしまったら分かるはずだ。
あたしは隠す必要などないと思い、首を縦に小さく振った。
『…好き…。でも諦めなきゃ…』
リンゴ飴をくるっと回転させながら、あたしは苦笑いを浮かべる。
『…俺を利用してもいいよ?』
聡の言葉を疑った。
利用してもいい?
どうして?
利用されて気分のいい人はいないはずだ。
でも聡はなんでそんなことを言う?
『え…何言ってるの?
利用なんて…出来るわけないよ…』
静かな空気があたしたちの間をすり抜けていく。もういつの間にか、夜がきていた。
相変わらず周りはうるさくて、蝉の声すら聞こえない。
その時、あたしはゆっくりと聡に包まれたの…