Heaven
我慢しているつもりなのに…
あたしは浴衣の袖で涙を拭う。
陸にはなるべく見せたくない。
『電話は…京子が毎日してくるんだ…だから出てるだけ』
『でも今日一緒に…来てたじゃん…』
うまく言葉が発せられない。
喉に熱いものが込み上げてきて、それが邪魔をしているのだ。
ここは人があまり通らないせいか、ゆっくりとした時間が流れている。
街灯があたしたちを照らす。
まるで今日の主役だと言っているように。
『あれは頼まれただけだって…』
はぁ…と溜め息を漏らす陸。
あたしと話すのがめんどくさいの?と問いただしてみたくなるが、喧嘩になりそうでやめた。
『何で…期待持たすの?京子が可哀想じゃん…好きになってもらおうと必死になって頑張っているのに…陸は無責任すぎるよ!!』
京子は頑張って毎日電話をしていたに違いない。その必死さ、痛いほど分かる。