Heaven


好きになってもらいたくて、心を向いて欲しくて、いろいろなものを犠牲にし、相手を手に入れることを、あたしはしてきたつもりだ。

でも相手が無責任だったら、今までしてきた苦労は水の泡になってしまう。

陸には分かる?
あたしと京子の気持ち…

『俺…俺も必死なんだよ!!好きな人に向いてもらおうって!!分からねぇのは美羽じゃねぇか!』


陸の怒鳴り声が耳に容赦なく入ってくる。
こんな怒った陸を見たのは初めてかもしれない。

肩を小刻みに震わせ、
あたしはその場を立つ。そして陸から離れていこうとしたとき、陸に腕を掴まれた。

びくん、と反応する体。
あたしはゆっくりと後ろを振り返る。



『…足、怪我してるだろ?これ、使え』


陸が差し出したものは、一枚の絆創膏だった。
あたしは足元に視線をずらす。
陸の言った通り、足がすりむけて赤くなっていた。


『…ありがと…』



陸はいつもそう。
自分のことより、
あたしのことを先に心配してくれるよね…



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