Heaven
~2.息詰まる空間~
春は出逢いが多いと、誰かが言っていた。
でも俺は信じていなかった。
だけど信じてみようと思ったんだ。
春にキミと出逢ったから─…
キミは髪の毛を靡かせながら、俺の横を通って屋上から出て行った。
バタンと閉まるドアの音だけを屋上に残して消えたキミに、もう一度逢いたいと思っている俺がいた。
『…やっべぇ…』
胸に軽く手を当てて、心臓の音を聞いてみる。
どくん、どくんと弾む心臓のリズムが、手に伝わってくる。
こんなに緊張したのは美加とのキス以来かも。
こう過去を辿って照らし合わせてみた。
キミは先輩かもしれない。
スリッパの色を見ておけば良かった。
それと名前も。
後悔だけが俺に残っている。
もう一度、
もう一度、キミに逢いたい。
俺は深呼吸をして、逢えるように空へ向かって願った。
『また逢えるといいな…』