Heaven


道路を渡り終え、
涙を手で振り払った。


『美羽!!』


遠くから聞こえる、
愛しい人の声…

聞く度に心臓が高鳴る。

あたし、陸が好きだよ…




その時だった─…

大きなクラクションが街全体に響き渡ったのは…
うるさいくらいの急ブレーキの音。
そして鈍い音。

たくさんの音があたしの耳に響き渡る。

愛しい人の声は聞こえない…


ゆっくりと後ろを振り返る。
うまく息が出来ずに、
ただ後ろを振り返った…

そこには…
愛しい人が道路の真ん中で倒れていた…


うずくまって…
ぴくりとも動かない…
陸の姿が─…



『人が引かれた…』


後ろの人の声でハッと我に返る。


あれは誰?
陸なの…?


嘘…嘘でしょ…


これは夢だよね…


一定の速度で点滅する車のライト。
立ち止まる人々。

道路に倒れて動かない…陸の姿…



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