Heaven


あたしは急いで陸の元へと駆け寄った。
周りなんか見えない。
映るのは陸の姿だけ。


陸に近付いていくと、
陸から流れている、鮮やかな血で辺りは染まっていた。


信じたくないなくて…

でも今倒れているのは陸に間違いない。
綺麗な肌に返り血が飛んでいる。


まるで眠っているようで…


あたしは陸を抱き上げた。


さらさらな茶色の髪の毛。
大きな瞳…。
赤い唇…。
それと同じくらい赤い、陸の血…。


みるみるうちに白いワンピースは赤いワンピースと変わっていく。

まるで赤ワインを零したかのよう…
でもこれは赤ワインなんかじゃない…

陸の血…。


辺りが騒ぎ出す。
運転手であろう人が救急車を呼んでいた。
たくさんの野次馬。


あたしは一粒、涙を陸の頬に垂らした。



『陸…目開けてよ!!
お願い…目…開けて…』




いつものように…
笑ってよ…




陸…



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