Heaven
春や家族に『行け』と言われたらしいが、お別れをしたくなくてずっと行かなかったみたいだ。
陸の最後の姿を見ることを、美羽は自ら嫌だと言ったのだ。
そしてそれから、陸の家族はどこかへ引っ越してしまい、もう遺影にも、会うことすら出来なくなった。
だから美羽は、陸とまだ本当のお別れをしてない、と思っているよう。
写真や、空、星を見て常に陸を思い出しているのだ、と…美羽は静かに俺に教えてくれた。
『でも…陸は最後に美羽に会いたかったんじゃないのかな?』
『あたしは…陸とお別れしたら…陸との思い出ともお別れしなきゃいけないと思ったの…だから…行けなかった…』
別れるとき、
思い出とも別れなくてもいいと思う…
大切な思い出は自分の中にしまっておけばいい。
それを時々思い出して、幸せに微笑むことが出来るなら、それは最高に幸せだという証だから─…