Heaven
誰にだって不安になることはひとつ、ふたつ、あると思う。
いつもその不安に悩んで、泣いて、孤独な世界にひっそりと佇んで。
でも、その不安を消してくれた人がいたんだ。
その人は俺に、
人生という意味を教えてくれた─…
湿った空気が街中を覆っている。
俺は美羽の手をしっかりと握っていた。
美羽は温かい。
離したくないと思ってしまう。
だけど、もうお別れのようだ。
『ここ…あたしの家…』
こう言って美羽は足を止めた。
美羽が指差す場所には、洋風の可愛らしい家が建っている。
表札には《高木》という文字。
ふと、隣の家を見ると…夜空に似たような色をしていた。
隣の家は…昔の陸の家。
自分でも分からない気持ちが込み上げてくる。
俺は再び、美羽に視線をずらし、カバンの中からメモ帳とペンを取り出し、そこに11の数字を書いていく。
『これ、俺の番号だから、泣きそうなときはいつでも電話してきて?
俺が笑わすから』