Heaven


数学のように恋愛はすぐ答えなど出ない。
数学のように式を覚えれば答えが出るという仕組みなら、俺は恋愛を拒むことはないだろう。

でもそうはいかないのだ。
数学は答えが出るから面白いものであって、
恋愛は答えが出ないから悩んだりするもの。

でも必ず数学にも答えがあり、恋愛にも答えがあるのだ…。



『…俺は最後に笑の名前を呼ぶだろうな。そして《行ってきます》と言って眠りたい』


『…婆ちゃんの名前か…。やっぱりみんなそうなんだね…。でも、何で《行ってきます》なの?』


爺ちゃんは俺を見下ろし、また微笑む。


『逢いたい人がいるんだ。その人に逢いに行きたいんだ。俺はずっと願っていたからね。真っ白な世界を見てみたいんだ』


逢いたい人─…
それは…誰ですか─…?


俺も最後のとき…必ずキミの名前を呼ぼう。
隣にいる、キミの名前を。


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