Heaven
久しぶりに見る婆ちゃんの姿。
黒の喪服に身を包んだ婆ちゃんの背中が、真っ直ぐ伸びていて、悲しみなど漂ってこない。
どうして?
悲しいはずだろ…?
違う。
婆ちゃんは強いのだ。
爺ちゃんの幸せを望めるほど、強い人なのだ。
『遠かったでしょう。家の中で休んでなさい。』
婆ちゃんはこう言って、俺たち家族を家の中へと招く。
通夜は夜からだ。
それまで半日以上時間がある。
俺は家の中に入り、懐かしさに浸る。
よく小さい頃、ここで遊んだものだ。
一本の柱に近づき、それを触る。
そこには身長を測っただろうと思われる傷がいくつもついていた。
懐かしさで溢れている部屋。
爺ちゃんの家…
俺は耐えられなくなり、涙をゆっくりと流す。
爺ちゃんの匂いが広がっている…。
まだ爺ちゃんがいそうな感覚に陥る…。
俺の写真を撮ってくれそうで…、そんなとき、背後に気配を感じた。