Heaven


『雅、大きくなったわね』


後ろを振り返ると、そこには小さく微笑んだ婆ちゃんの姿があった。
黒の着物がとても似合っている。

久しぶりに見る婆ちゃんの顔には、深く刻まれた皺がたくさんあった。

でも笑った顔は優しさで溢れていた。



『そうだね。ずっと逢ってなかったもんね』


俺は指先で涙を祓い、
婆ちゃんに笑顔を向ける。
すると婆ちゃんは俺の腕を掴み、『こっちにおいで』と俺をある部屋へと連れていった。

そんな婆ちゃんを不思議に思いながら、俺は素直についていく。


婆ちゃんが向かった場所は、爺ちゃんの書斎だ。この部屋にはたくさんの写真が飾られている。
いわゆる、爺ちゃんの仕事場。



『どうしたの?』


『雅に話さなきゃいけないことがあるんだよ』


そう言って、書斎の鍵をあける婆ちゃん。


爺ちゃんは、
俺に大事なことを教えてくれたんだ…。



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