Heaven
下唇を噛み、俺はそのカメラに触れた。
ずっしりと重いカメラは、爺ちゃんの魂が入っているのだと思う。
『爺ちゃん…バカだよ。もし俺が写真やらないって言ったらどうしてたんだよ…』
カメラにポタポタと滴が落ちていく。
カメラは滴を弾く。
『優は雅が写真をやるって知っていたみたいだよ。だから私に前からこう言っていたんだと思う。そのカメラね、優が最後に手入れしていたカメラなんだよ…』
…最後に手入れをしていたカメラ…
それは爺ちゃんが死ぬ直前まで触れていたカメラ…。
また涙の速度が速くなる。
俺はまだ笑顔になれそうもない。
ごめんなさい…。
今日まで泣いてもいいですか…?
『爺ちゃん…』
ぎゅっとカメラを抱きかかえる俺。
すると婆ちゃんが俺に一枚の紙切れを渡してきた。
それは…、
『優が最後に残した言葉だよ…』
真っ白の紙切れに…
複数の文字。
その文字は…
《行ってきます》