Heaven
俺には無理だよ。
人の背中を押せるほど強くもないし…勇気もない。
爺ちゃんと婆ちゃんを見習いたいと思った。
『婆ちゃんはすごいね』
『そう?全然すごくないわよ。ただ…優は運命の人だからね…。だからこんなにも愛しているのよ…』
婆ちゃんはこう言って、視線を右手の薬指に落とした。
そこにはきらっと光るシルバーの結婚指輪がはめられている。
そしてその指輪に、一滴の涙を零した。
涙を弾き、指輪に付着する涙は、屈託などなく、この空のように透き通っていた。
『俺も運命の人を大切にしたいな…』
自惚れでもいいから…、美羽を運命の人だと思ってもいいかな─…?
『これ、デスクの一番上の鍵。雅にカメラと一緒に渡せって前から言われていたの』
婆ちゃんは小さな箱から銀色の鍵を取り出す。
そしてそれを俺に差し出した。
『え…?』
『開けてみなさい。きっとなにかが分かるはずよ』