Heaven


彼女は寂しそうな瞳をして、陸の家を見上げていた。

俺は彼女のことが気になり、つい声を掛けてしまう。
お人好しの性格の俺。



『誰?ここに住んでた人、引っ越したみたいだよ?』


彼女は俺の声にびくりと反応をして、一歩後退りをした。
そんな彼女を不思議に思う。
まるでなにかに怯えている小動物のよう。


『あ…あたし…』


『…ん?』



今日は何の日?
今日は美羽の生まれた日。


それともうひとつ。

今日は陸が天国に逝った日。



『もしかして…北村…京子…さん?』



冷たい風が俺達を包む。彼女はゆっくりと首を縦に振った。

北村京子。
去年、陸と歩いていたところを美羽に見られてしまった彼女。

陸が死んでから、姿を消したと聞いたのに…


なぜ陸の家の前にいるんだ?



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