Heaven
連れていかないで…。
ゆっくりと美羽を抱きかかえて、美羽の頬を触る。
美羽は瞳を閉じて、反応をしない。
俺は何度も名前を呼んだ。
何度も…何度も…。
『美羽!!美羽!!』
《あたしはもっと先の世界にいきたいの。こんな世界大嫌い…》
行かないで…
俺の傍にいて…
笑ってよ…
爺ちゃん…
美羽を守ってください。美羽を助けてください。
愛する人なんです。
愛しているんです。
伝えたいんです。
…お願い─…。
涙を一粒、美羽の頬に垂らすと、ゆっくりと美羽の閉じていた瞳が開いた。
『みや…び』
『美羽!!』
『あたしね…やっと分かったよ…陸が最後にあたしの名前を呼んでくれた理由…』
霞む息で必死に言葉を並べていく美羽。
俺は美羽の手を握りしめた。
『雅の…言った通りだったね…あたしも…最後には愛している人の…名前…呼びたい…』
近付いてくる救急車の音。
そして…徐々に力が抜けていく美羽の手…。
『…雅って…』