Heaven


本当は聞きたかった。
だけどまた冷たくされるのではないかと思って、怖くて聞けなかったんだ。
折角キミの名前が聞けたのだ。
今はそれだけで十分。


入学式が始まる。
興味がない生徒たちがほとんどだろう。
俺も興味がなかった。


『美羽って読むんだ。可愛い名前だね?俺、坂井雅!よろしくな!美羽!』


この調子で仲良くなろうと思ったのだが、現実はそんなにあまくはない。美羽は呆れた顔をして、俺を見ながら溜め息をついた。


『…あんたってさ…いつもそうなの?本当に悩みなさそう』


『美羽って呼んじゃだめ?てか屋上で会ったこと覚えてんじゃん!』


しまったという顔を見せる美羽。
俺は美羽って呼びたい。こんな綺麗な名前を呼ばないと勿体無いと思ったからだ。

『美羽』と心の中で読んでみる。
当たり前のように返事はないが、俺はそれだけで満たされていく。


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