Heaven
方向音痴はこういうとき不便だ。
一度通った道なのに、俺は直ぐ忘れてしまう。
『ここどごだよ』と愚痴を吐きながら、迷路のような学校をさ迷う俺。
廊下には誰一人の姿もない。
つまり俺しかいないということ。
聞くことすら出来ない。これも神様の悪戯なのか?
『雅!お前なにやってんだよ!』
するとどこからか声が聞こえてくる。
声がする方に振り返る俺。
そこには息を切らしたヒカルがいた。
『え…?なにって…』
ここで道が分からなくなったとか言ったら馬鹿にされそうで俺は嘘をつく。
『は?なに?』
『ちょっと散歩してただけ!』
下手な嘘。
俺は小さい頃から嘘も苦手だ。
あのビラを貰ってしまう癖と同じくらい苦手。
『どうせ道に迷ったんだろ?』
下手な嘘はすぐバレてしまう。
さすがヒカルだ。
こう感心している自分に思わず『何でだよ』と突っ込んでしまった。