Heaven
『俺、ヒカルの恋愛…知らない。あいつ聞いても言わねぇし…』
ぽたっと、グラスについた水がテーブルへと落ちていく。
それが俺の涙のように見えた。
『そっか…ヒカルあんまり自分のこと話さないしね』
さくらはこう言ってグレープフルーツジュースを半分ぐらいまで一気に飲み干す。
力になってあげられなくてごめん。
改めて自分の無力さに気がつく。
『ごめんな。でも何でも協力するから』
今の俺はなんて弱々しかったのだろう。
頼りなんてないに等しい。
自分のことでも大変なのに。
美加にまだ未練をもっているのに、美加に近付けないで、遠くから美加を見るだけ。
なにも出来ない臆病者。
本当は話しかけたいのに、そんな感情さえ押し殺さなくてはならない。
だって俺と美加はもう他人だから。
このグラスのように素直に泣けたら、俺はどんなに楽だろう。
どんなに辛くないだろう。