Heaven


泣けないのも辛い。
だけど何も出来ないのも余計辛い…

きっとさくらも同じ気持ちなんだと思う。
だから今にも泣きそうな顔をしているんだろ?

眉間に皺を寄せて、
唇をぎゅっと噛み締めて、ストローを持つ手が少しだけ震えてるよ?


『泣きたかったら泣いたらいいよ。泣きたいときに泣かなきゃ勿体無いだろ?』


俺は下を向いてさくらに言う。
さくらはきっと今泣いているにちがいない。
さくらには俺のように我慢などして欲しくない…

ゆっくりと顔を上げ、さくらを見ると、やはりさくらの瞳からは涙が流れていた。
そんなさくらと被るかのように現れたのは…
美羽の姿─…

美羽の涙が…残像としてさくらに被さる。


なんで美羽の姿が現れるのだろう?


俺は揺れ動いていたんだ。
二人の女性の間を。


自分の気持ちが、
この先曇っていく。


すっきりと晴れるのは、ずっと先─…



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