Heaven


ポタポタと零れ落ちるさくらの涙は、グラスから落ちた水滴と入り混じる。
俺はその滴たちを、ただ見ることしか出来ない。
さくらに優しくしてあげられないでいた。
どうしたらいいのか、
どうしたらさくらは泣き止んでくれるのか。

俺とさくらは同じ立場にいる。
もし俺がさくらの立場に逆転をしたら、俺は何もしないで欲しいと思う。
今の俺には頭を撫でてやることでさえ出来ない小さい人間。
小さな、小さな人間。


俺は唇を噛み締めて、さくらから視線を逸らす。そして窓から街を見た。ファミレスの隣にある大きな道路。


向こう側にいる、
見たことのある人たち。
俺は一瞬にしてその人たちに視線を奪われた。


『…なんで?』


信じられなくて。
苦しくて…また辛くて…


『え…何?』


さくらが俺に気づき、
さくらも俺と同じ方向に顔を傾ける。


『さくら!見るな!!』


俺の声は遅かった─…


さくらの涙は速度をあげる…


俺とさくらの瞳に映る光景は─…
仲良く手を繋ぐ─…




ヒカルと美加の姿…



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