Heaven


俺は女の涙に弱い。
だから泣いていた美羽に凄く動揺してしまったんだ。


『…さくら…諦めたりすんなよ。俺だって諦めてぇけど…美加を見る苦しくなる。美加に恋してる自分にそっくりなんだ』

小さい声でさくらを励ます。
その声がさくらにではなく、自分自身に言っているようだ。
俺も諦めたい。
だけど無理なんだ。

美加を見ると、必ず俺は恋をしている。
錯覚などではない。
本当に恋をしているのだ。


『で…も…あんな二人見たら、さくら…無理だよ…』


さくらは涙の速度を更に速くして、立ち上がり、勢いよく走り出した。


『さくら…!!』


俺は慌ててさくらの後を追う。
だが会計をしてないことに気づき、もう一度席に戻り伝票を手に持った。
ふと俺達が飲んだジュースのグラスを見ると、氷たちは完全に溶けていて…グラスに残っていたのは薄く濁った水だけだった─…



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