Heaven


自分が辛いとき、
自分が苦しいとき、
助けて欲しいとき、
人間は必ず愛しい人の名前を呼ぶ。

人間は一緒なのだ。
愛しい人に助けて欲しいものだ。


『…さくら…』


さくらをこんな姿にしているヒカルが許せないでいた。
今頃あいつは何をしてるんだよ?
苛々が立ち込める。

震えるさくらの肩。
さくらとは違う意味を持って、俺は震えている。

『雅…さくら…心が痛い…もうね?ボロボロだよ…ずっとヒカルだけだったんだよ?ずっと忘れられなかったんだよ…』


泣き叫ぶさくら。
俺は唇を噛み締めてぎゅっと怒りを静めていた。
さくらを抱きしめるのは俺じゃない。
さくらの傷を癒やすのは俺じゃない。


そんな時、二人の耳に聞こえてきた声。


『雅とさくら?こんなとこで何してんの?』


聞き覚えのある声。
何もなかったように接する本人。


ゆっくりと俺は振り返る。


『…ヒカル…』


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