Heaven


嘘をつくと何回も嘘をつかなくてはならない。
ずっと繰り返しなのだ。もうここでヒカルは1つ嘘をついた。
次はいつ嘘をつくのだろうか?
もう考えたくもないことだ。


『さくら…』


さくらの姿はもう見えなくなってしまった。
さくらが走っていった方を見つめる俺。

すると立っていたヒカルが、さくらの後を追うように走り出す。


『ヒカル!!』


俺は立ち上がり、ヒカルの腕を強く握った。
今さくらを追いかけたりなんかしたら、一番辛いのはさくらだ。


『離せよ!さくら泣いてたじゃねぇか!』


『待て!今行ったら辛くなるのはさくらだぞ!?お前それくらい考えろ!ヒカルはさくらの気持ち考えたことあんのかよ!!』


鳴り響く俺の怒鳴り声。それを聞いたヒカルの腕が、弱々しくなっていく。


『さくらの気持ち…?』

『今のお前は何も出来ねぇよ。よく考えろ。今のヒカル、最低だぞ。はっきりいって幻滅する』


俺はこう言って、もう一度ヒカルを睨みつけ、鞄を拾い、ヒカルから離れて行く。


人間で一番厄介なのは、嫉妬なのだ。

嫉妬で人間はおかしくなる─…



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