Heaven


ヒカルが俺の名前を遠くから呼ぶ。
だけど俺は振り返ったりなどしない。
ヒカルには自分で気がついて欲しいからだ。
さくらが傷ついた、と。俺から間接的に教えたって意味がないと思うんだ。


『ばーか…』


俺は込み上げてくる涙を抑え、空を見上げる。

恋愛は難しい。
でも…人を愛することはもっともっと、難しいんだ─…


…やはり方向音痴な俺は道に迷い、来た時より倍の時間をかけてバス停へと着いた。
バスを待っていると、数分後バスは来て、俺はそれに乗る。
バスの中は比較的空いていて、俺はお気に入りである、一番後ろの隅へと腰を下ろした。

そこで移り変わる世界を見るんだ。
ひらひらと舞い散る桜。春風が桜と遊んでいるようで、まぜて欲しいと思った。

だって…何も考えなくても良さそうだから…

今の俺の中は、嫉妬のどろどろとした感情で溢れているから。


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