Heaven
美月のこんな表情、見たことがない。
いつもは嘲笑って俺を馬鹿にするのに、今日は違う。
『恋愛なんて、すげぇ難しい問題より難しいんだって』
こう言ってワックスを手に取り立ち上がる。
そして俺を見下ろした。
『難しい問題より?』
『雅はまだ美加ちゃんを引きずってんの?』
当たり前なことを聞くな、と突っ込みそうになったが、ここは我慢をし、首を縦に振った。
すると俺の行動を見た雅が、フッと笑う。
『それ、違うんじゃねぇ?』
『は?!』
美月に否定されることは沢山あった。
だけどこれまでも否定されるとは…思ってもいなかった。
何故俺の事情を知らない美月がそんなこと言えるんだ?
言えねぇだろ?
『雅のその気持ち、ただ居なくなって寂しいだけなんじゃねぇの?ま、俺は雅じゃねぇし、女に困ってないから分からないけど』
また俺を見ては勝ち誇ったような顔をして、俺の部屋から出て行った。