Heaven


うるさい音を出して階段を下りていく。
『雅、うるさいわよ』と母さんに怒られたが今の俺には無理な話だ。
焦らないと時間がない。なぜならば、ヒカルが迎えに来るから。

昨日喧嘩したのに、今日会わなければならないのは、とても酷い話だ。


顔を見たくない。

これが俺の本心。


顔を洗い、歯を磨く。
そして鏡を見ながら、少しだけ髪の毛をセットする。
昨日父さんがセットしてくれたようにはいかないが、仕方がない。


最後にネクタイを締めて、玄関に向かう。


『ちょっと雅、ご飯は!?』


母さんがリビングから顔を覗かせる。
俺は母さんに『いらない』と言って、家から飛び出た。


玄関の前にはヒカルの姿はなかった。
これで顔を合わせることはない、と思っていたのだが、あることを思い出す。


それはヒカルと同じクラスということ。
昨日ヒカルと同じクラスで喜んでいたのに、今日は昨日と全く逆な気持ち。


だから人間は不思議なんだ。



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