Heaven


先生と教室に着いた頃、学校全体にチャイムの音が鳴り響いた。

俺と先生は同時に教室に入り、俺は席へと向かう。
俺の前の席のヒカルは下を向いてなにかをやっているようだ。
どうせ携帯だろう。
ヒカルに『おはよ』など言わず、自分の席へと座る。

俺の隣には美羽がいた。真っ直ぐ前をただ見ていた。

先程言われた言葉を思い出す。
『あんたにあたしの傷を癒せる?』
『あんたの優しさは意味のないこと』


この二つの言葉が俺を支配していた。
なんでこんなことを言ったのだろうと、疑問で仕方がない。


『美羽…』


小さな声で美羽を呼ぶが、美羽は俺の問い掛けに耳すら傾けないようだ。前では先生が今日の予定を話していく。
今日は午前で学校が終わる。
短い時間の中で、俺は美羽に謝りたかった。
一度でいいから。
ちゃんと顔を見て、
謝りたかったんだ─…


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