嵐がやって来ました。打ち付ける雨や折れた木々が家に当たり、風はごぉごぉと家を取り込んでいました。今にも飛ばされそうでしたが、とうとう、ぐらっと浮いて床が傾き始めました。その時でした。「心配いらんけぇ、どっこい!どっこい!」鬼が家ごと娘を抱えていました。飛んで来た木に顔を打ちすえられても、太い腕でガッと家を押さえつけていました。「どっこい!どっこい!」風音に負けない鬼の声は一晩中、家の中の娘に聞こえました。
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