思い出なんていらない。
「いい!しっかりつかまってろよ。振り落とされんなよ」
そう言ってしっかり加奈の手を俺の腰に回させる。
走っている間に一生懸命加奈が大きな声で喋ってくるけど、
何も聞こえないよ。
「え~なに!なに言ってんのか聞こえないよ!」
そこへちょうど信号が赤になったのでヘルメットのシールドを開けて聞いた。
「なんだよ?なんて言ったの?」
「すごい気持ちいいね」
って言ったんだよ。
やっぱり乗ってよかったよ。
そして何事もなく無事に目的の海に着きバイクを止めて、
少し散歩し、砂浜に腰掛けた。
なんか風が気持ちよくって、
俺と加奈は何を喋るわけでもなくただ風を楽しんだ。
そして気持ちよくって、俺は加奈の膝枕で寝ちゃったんだ。
「亮?亮?そろそろ帰ろう・・・暗くなってきちゃったよ」
気がつくともう日が落ち暗くなってきていた。
「ヤベ~俺そんなに寝ちゃったんだ・・じゃ、行くか・・」
「亮?・・・・私、仁に出会えてよかった。
またバイクに乗る事ができてよかったよ。ありがとね。」
そう言ってキスをしてきたんだ。
これがはじめてのキスだった。
そして、最後のキスにもなったんだ・・・・
このあと、俺は事故を起こす。
急に飛び出してきた犬をよけようとして、
よけ切れなくて事故を起こしてしまう。
加奈が道路に投げ出されて・・・そのまま意識が戻る事はなかった。
俺だけが生き残ってしまったんだ。
これ以来俺はもう2度と恋なんかしないと誓った。
そしてバイクにも、もう乗らないと誓ったんだ・・・
思い出なんてなにもいらないと思ったんだ。
思い出が多すぎるほど悲しみも大きくなるから・・・
俺は人を愛するのを辞めた・・・
加奈以外の女を愛する事なんてできない。
一生愛していく女は加奈ただ1人だから・・・これからもずっと。
こうして罪を償っていくしかないよ。
加奈?それで許してくれよな・・・
俺が行くまで、待ってて。
必ずお前のところに行く時がいつかくるからさ。
END 「思い出なんていらない」story by :あやね