君を愛してる 〜だから死にたい〜
 病院から出るまで俺達は一言も言葉を交わさなかった。

 「一稀……」

 「ん?」

 病院を出たところで聡が俺の名前を呼び、俺は足を止めて聡の方を振り返った。

 「……嘘だよな」

 「……多分――」

 「美里は嘘が下手だからな……」

 聡も気付いていた、ならばおそらく嘘だろう。

 しかし、俺達にはそれを確認する術が無かった。

 美里が盲腸だと言う以上、母親も口を合わせるだろう。
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