君を愛してる 〜だから死にたい〜
 「誰も知らない遠くに……」

 そう言って歩き出した聡は数歩進んで立ち止まると振り返った。

 「……一稀、こんな事になってごめんな、もう会う事もないかもしれないけど、俺はお前を親友だと思ってる、きっと……美里も――」

 そして聡は二度と振り返る事なく歩いて行った。

 晴れていたはずの空にはいつの間にか真っ黒い雲がかかり、やがて俺の顔に雨粒を落とし始めた。

 俺は避ける事もせずに雨に打たれ立ち尽くしていたんだ。
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