君を愛してる 〜だから死にたい〜
 「やっ……嘘じゃないから!彼女と――」

 「声、うわずってますよ?」

 「そ、そんなわけな――」

 「目、泳いでますよ?」

 砂稀は口元に手を当ててもう一度『クスッ』っと笑った。

 「きっとあの日の一稀さんも声をうわずらせて目を泳がせていたんでしょうね。でも、私は気付けなかった」

 少しだけ遠くを見るように目を細めた砂稀は、近付いてきてその白く細い手で俺の頬に触れた。

 
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