明日への扉
「お礼は… チョコレートな。」



ふざけたような、真面目なような…


微妙な言い方をする篤史。





「だから… ないって。」



「先輩には、作っても?」



怒ったような声に、思わず顔を上げた。




真っ直ぐに私を見る瞳が、胸を締めつける。



息が苦しくなって、視線を落とした。





「…誰にも、作ってないよ。」




「お前、うちのクラスでも噂になってんぞ。 その… 付き合ってるとか…」



「付き合ってないよ。ただ… カッコいいなって…」




「ふぅーん… カッコいいって、毎日見て、ニコニコしてんだ。」



「しっ、柴田には関係ないでしょ!」





「…まぁ、そうだけど。」



「大体さ、モテモテで毎年たくさんもらってる人が、何で催促するわけ?! 私があげる必要ないし。みんなからので、充分じゃない!」



大きくなってしまった私の声が、響いた。








「…あげる必要ない、か…。」



静かに、それだけ言って


アイツは出て行った。






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