明日への扉
彼の左手が、私の頭に触れる。








「…とれた?」




「ん… もうちょっと。」




彼が手を乗せてから、1分以上過ぎてる。



それに、何かを取ってる感じはない。






これってさ…




うつむいてた私は、少し視線を上げた。




目の前には、彼の胸元が見える。




「柴田… 背、伸びたね。中1の頃は、同じくらいだったのに…。」





こんなに近くに篤史がいて。



いつもなら、心臓バクバクのはずなのに…。



何故か今は落ち着いて、こんな事が言えた。






「何年前の話だよ。お前だって、でかくなったじゃん。 …中学の時は、弱くて、折れそうだったのに。」




「すいませんね、色黒で。」



「いやっ、あれはっ!」




ちょっと焦った彼が、おかしくて。




「ふふっ…」





オデコを、彼の胸にコツンと当てた。







< 189 / 208 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop