明日への扉
「おーい、柴田! 早くしろー。帰ったのかー?」




パタパタというサンダルの音と共に近づいてくる、先生の声。




ビクッと肩が震え、篤史の力が緩んだ時に、思わず離れた。





「います! すぐ行きます!」



彼が入り口から叫んだ。




すると、サンダルの音も遠ざかった。






篤史の温もりで火照った顔や身体が、スーッと冷えていく。








「なに?」



入り口から私を見てる、篤史。





「…えっ?」




「何か、言おうとしただろ?」




「…あぁ…」





あの温もりの中なら… 言えそうだったんだけど…




冷えてしまった身体は、いつもの私に戻ってしまった。




それに、言ったところで、どうなるの?




篤史は、遠くへ行っちゃうんだよ。






< 192 / 208 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop