明日への扉
「あれー、石川先生。まだいたの? 今日、休みでしょ?」



医局に戻ると、同僚がコーヒーをすすりながら近づいてきた。




「夜の急患の子を見に行ってたから。 もう帰るよ。」





着替えて廊下に出ると、腰の辺りに振動を感じる。



ポケットから携帯を取り出すと、母親からのメール。



『急ぎの用事あり。早急に来られたし。』



何が、来られたし、よ。



いつの時代の人間なのよ。




白い息をゴジラのように吐き出し、両手をポッケに突っ込んで歩きだした。










「ただいまー。」




「あれ? どうしたの、あんた。」




実家のリビングに入ると、キョトンと私を見る母の顔。




「どうしたって… 早急に来いって呼んだでしょ。今日休みなの。」




ソファーに背中を沈めると、大きなアクビがでる。




「ふーん。 ま、良かった。ホントに急ぎなのよ。」




「ねぇ! お見合いなら、しないよ!」



隣の部屋に入っていく、母の背中に叫んだ。







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