明日への扉
その時


なぜか心で考えるより先に、私の手は動いて。




篤史のプリントを奪い取り、自分の分を彼に押し付けていた。




「わー、希、優しい〜。自分が濡れたプリント取ってあげるなんて〜。」



純ちゃんの言葉で、自分の行動を改めて自覚し、顔が上げられなくなった。



前の席の男子と純ちゃんが、『ヒュ〜!』と、からかう。







「当たり前だろ!こいつは、お前らと違って優しっ…」



冷やかしを遮った篤史の声が、途中で止まる。




「ふふっ…」



純ちゃんの声に、チラッと視線を上げると、前の二人がニヤニヤ見てる。




えっと…



篤史は、どんな顔してるのかな。




でも、見られないよ。






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