明日への扉
篤史は何も言わず、ギュッとカイロを握りしめて右のポケットに入れた。







授業が始まり、今度は私が寒くなってきた。




「ねぇ、カイロ返してよ…」



うつむきながら、コソコソと話す。




「……まだ、暖まってねーもん。」



黒板を見ながら、ボソッと呟くアイツ。




「もうっ… けち。」



やらなきゃよかったよ…




今度は私が、手のひらに息を吹き掛けた。



そしてポケットに手を入れようとした時



「!!」



いきなり手首を掴まれ、思わず叫びそうになって、慌てて口を押さえた。




私の左手は


篤史のポケットに入れられていた。




篤史は何事もなかったように手を離し、黒板を見てノートに何か書いてる。




これは…



どーゆー事ですか?




このまま、アイツのポケットで手を温めてもいいの?





< 95 / 208 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop