Once again

最後の瞬間は意外にもあっさりで

一緒に暮らした部屋を
1人、後にする瞬間…





「じゃあ…」

『…うん』





たった一言交わしたこの言葉だけで

ずっと一緒だった俺達の当たり前の毎日は


…終わりを迎えた



今までの同じ時間は何もなかったかのようで





俺は……涙も出なかった









「…実感ねぇし」





部屋を出て
タクシーに乗って
駅に着いて
電車に乗ってからも



蘭との毎日が終わった
蘭との未来が消えた
蘭との全てがない


今の瞬間からの時間に
ぜんぜん実感がなくて…





「こんなもんだったのかもな」





住み慣れた街景色が流れていく窓の外を

一人きりで眺めながら…







初夏に変わろうとしてる5月の始め頃に

こうして俺たちの想いは終わりを迎えた

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