手-hand-

だから確かめたかった


伝わってこない気持ち…

見えない気持ち…



あたしのコトを
どれだけ好きなのか




『ねぇ…歩夢さ』

「ん?」

『前に聞いてきたじゃん…必要?って』

「聞いたけど…それが何?」





あたしのコトを
必要としてくれてるのか





『もしさ、別れたいって言ったら…どーする?』

「え?」




ちゃんと伝えて欲しい

ちゃんと見せて欲しい

その証拠が欲しい



そうすればきっと
今からもあたしは歩夢と…





「俺はお前が必要だし…別れるとかムリだし」

『うん…わかって…』

「けどさ…ムリなんだろ?お前は」

『え…』

「俺じゃムリなんだな」

『歩夢…?』

「…ごめんな」





違う…


そんな返事が聞きたいんじゃ…


そんな答えが欲しかったんじゃ…





「いいよ…俺は」

『っ…』

「お前が別れたいなら」

『ごめっ…あた…』





ただあたしは

確かめたかっただけで…


歩夢の気持ちを

確かめたかっただけで…





「ありがとな…今まで」

『違っ…そんなっ…』


―ポン…


「じゃあ…な」

『ぅっ…違っ…』





揺れる視界に見えた背中

ゆっくり離れてく背中


ドアの向こうに消えた…





『うっ…っ……歩夢っ!!』





自分から手離した右手を伸ばして



あの優しい温もりを

歩夢の暖かい手を掴もうと


あたしの…右手は・・・

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