【実話】星になったキミへ
私達は、人気のないホールに座ると、郁が切り出してきた。



「あのね、りんのリスカの跡、見せて欲しいんだ…」


やっぱり…



私達は、どんなに仲良くなっても、腕の傷、『リスカの跡』には、お互いに触れなかった。



なんとなく、触れられない事だった。


リスカの跡には、想いが込められている。



その時、その時の寂しく、悲しい想いが…



私達は、その事を知ってるだけに、触れてこなかった。



「今更、どうしたの?郁らしくないなぁ。」



「私のも、見せるから。」



「だって、見せ物じゃないじゃん。私、この傷跡は、健にしか見せないって決めてるの。ごめん、郁…」



「…………………」



郁は、何か考え込んでいるようだった。



長いまつげを伏せ、女の子らしい唇に手を当てている。


゛何か言いたいみたい″

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