今川焼
嫌味や皮肉ともとれる突然の発言に茂さんは呆気にとられていたが、俺はさして悪気を感じていなかった。
現に事実ではあった。
「…それ本当に?」
「たぶん…憶測で物を言いたくないんですけど、妹ここの今川焼が大好きで最近毎日のように食ってたから……ごめんなさい。」
「いや、もしそれが本当にウチのせいなら謝らなきゃならねえのはウチだ。どうすりゃいいんだ…」
「そんな……っ。」
責め立てるつもりなど毛頭なかった。
「悪かったな。何て詫び入れようか…」
「そんなっ。気にしないでください。ただ妹が心配だったんで…つい。」
気まずい空気が流れる中…
「ただいまぁ。」
店の奥から聞こえてきた。
その声には覚えがある。
「……あ、いらっしゃいませっ。」
のれんをくぐると同時に一瞥を加え、俺を客として迎え入れた。
俺と同じ制服姿に身を包んだ…
例の男だった。